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遺伝子

アンチエイジングのDNAと遺伝子多型

遺伝子の二重らせん構造

 


 
ヒトのからだは1兆個の細胞から成り、どの細胞も46個の染色体を持ち、
2mの長さのDNAが折り畳まれ、30億のヌクレオチドが並んでいる。
驚くべき数字ですが、ここに生命としての遺伝情報が詰まっています。


遺伝子DNAの塩基配列には、わずかに個人差があります。
例えば血液型がA型、B型、O型、AB型と違うのもそのためです。
これを遺伝子多型と言います。

この遺伝子多型により、ヒトに得手不得手も生じます。
例えば痛みに強い弱いも遺伝子多型です。
このわずかな違いで様々なタイプが現れます。
体質というと分かりやすいかもしれません。

病気の発症には環境が大きく影響するのですが、
この遺伝子多型を検査することで弱点が把握できます。

したがってアンチエイジング医療では、遺伝子検査が必要になってきています。

 

長寿遺伝子, がん抑制遺伝子

AMPKとmTORのバランスは食事やストレス、睡眠、運動などのライフスタイルで変わる

長寿に関わる遺伝子には、Sirt1やFOXO,AMPK,mTORなどが知られています。
AMPKが作用すると病気が遠のき寿命が延びます。
mTORが働くと、病気にもなり寿命も縮みます。

アンチエイジングでは、遺伝子のスイッチを上手に調整することも求められます。
そのためには、食事や生活習慣、運動、ストレス、睡眠などを見直すことです。
がん抑制遺伝子を効かせるためにも、遺伝子の発現を調整することが何よりも大切です。

そこでつい最近までは、野菜や果物などの食材について議論が交わされて来ました。
赤ワインが良いというのもその1つです。
赤ワインに含まれるポリフェノールにレスベラトロールがあります。
レスベラトロールが長寿遺伝子を活性化させます。
そのためレスベラトロールの高価なサプリメントが販売されています。
しかしその欠点は、飲んでもお腹の中でほとんど吸収しないことです。
むしろ運動した方が安くて確実です。

しかし今や、アンチエイジング医療では長寿遺伝子をモレキュールで発現させるまでに至っていて
それはすでに私たちの手の届くところにあります。

時計遺伝子

日中と夜のリズムは遺伝子にもあり、時計遺伝子と呼ぶ
日の光と暗闇、リズム。
生命としてこの地球上に誕生して以来、このリズムは変わること無く、
私たちのからだに時計遺伝子として刻み込まれています。
しかし現代人の日没は、部屋の明かりを消した、まさにその瞬間です。

そのためもあって交代制勤務などでこのリズムを損ねると、
がんを始めとする様々な病気の発症リスクが高まることが、研究で明らかになっています。

交代制勤務の看護師には乳がんが多く発症します。
イタリアでの研究では、交代制勤務の看護師で時計遺伝子の発現に異常が多く観察されました。
夜勤者では歯周病の発症も多いです。

Light at Nightはがんという高い代償を払わされます。
スマホやPCのブルーライトを夕方以降に、目に入れないようにしましょう。
琥珀色のレンズのメガネ売られていますので、工夫次第で避けることもできます。

一方、運動など日中の活動を欠いてもがんになります。

テロメア

細胞分裂を繰り返すことでテロメア長が短くなる
 染色体の端にはテロメアと呼ばれる部位があります。
細胞分裂をする毎にテロメアは短くなって行き、やがて限界を迎えます。
この事象も寿命や病気の発症に関わります。

検査の結果テロメアが短ければ、生物学的年齢、すなわち真の年齢が進んでいることになります。
このテロメアの長さにも生活習慣が深く関わります。

短くなったテロメアは、生活習慣の改善で回復させることもできます。
テロメア長は検査ができるので、良い指標になります。

テロメアをを再び長くするハーブやサプリメントもあります。
それについては当院では、扱っていません。

エピジェネティクスについて

ある種の刺激で万能細胞である幹細胞の遺伝子にスイッチが入り、様々な体細胞に変化していくことは良く知られています。
エピジェネティクスを表す図
特に発生初期、胎児期、乳児期、そして成長期を通じて、環境に応じて幹細胞の遺伝子にスイッチが入り、組織細胞に分化し増殖し、だんだんと大人のからだに成長します。しかし一旦決められた組織細胞になると、幹細胞への後戻りは難しくなります。遺伝子本体に変化はありませんが、遺伝子の発現や細胞の表現型は続きます。これをエピジェネティクスと呼んでいます。どの遺伝子のスイッチが入るかは、その時の状況次第です。

第二次大戦中にオランダは、ナチスの進攻により飢饉に見舞われました。当然、妊婦にも食べ物が無くなります。すると胎児は、外の世界は食べ物が無い世界だと認識して、飢餓に強い遺伝子のスイッチをオンにして生まれてきます。エピジェネティクスにより生き延びようとしたのです。しかし戦争は終わり、豊食の時代を迎えます。彼らの飢餓に強い遺伝子の発現は戻らないので、むしろ糖尿病や高血圧症などで悩まされることになっていったのです。

妊娠期間中のある時期に、アルコールや薬剤などに胎児が暴露すると先天異常になることがあるのもエピジェネティクスです。

生まれたての赤ちゃんラットが、母ラットになめられたり、グルーミングされたり、色々と面倒を看てもらうと穏やかで落ち着いたラットに成長します。一方で、母ラットが育児放棄すると、不安な仕草を見せるラットに成長します。こうした行動の違いや脳神経に関わる病気もエピジェネティクスが大きく関わります。

エピジェネティクスはがんの発症にも関わります。

エピジェネティクスは、遺伝子そのものは変化させないのですが、その影響は3−4世代先まで及びます。したがってアンチエイジングは、胎児期から、あるいはもっと先祖から、実はすでに始まっているのです。


したがって、当院ではエピジェネティクスのコントロールも治療方針の柱の1つです。

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